「検査を受けたけれど、結果の紙を見てもよく分からなかった」。健康診断の結果表について、こう感じたことがある方は多いはずです。基準値の範囲内かどうかは分かっても、その数値が自分の生活とどうつながっているのか、何を変えればよいのかまでは読み取れません。
遺伝子検査と血液検査を組み合わせると、この状況が変わります。遺伝子は「生まれ持った設計図」、血液は「今この瞬間の状態」を示し、二つを重ねて読むことで、なぜその数値なのか、どこに注意すべきかが見えてきます。この記事では、tellmegen などの市販の遺伝子検査サービスが提供するレポートを参考に、私たちのパーソナル検査でどのような項目が分かり、どのようにレポートにまとめるのかを解説します。
先に結論
- 血液検査は「現在地」、遺伝子検査は「地図」。どちらか一方では読み解けないことが、両方そろうと見えてくる
- 遺伝子検査でわかるのは、祖先の構成、身体的な特性、特定の疾患に関連する因子の有無、栄養素の代謝傾向、薬剤への反応傾向など
- 血液検査の全項目を日本語で解説し、遺伝子の傾向と突き合わせたレポートをPDFでお渡しする
- 結果は「診断」ではなく「傾向」。生活習慣と食事、必要に応じた施術に落とし込んでこそ意味がある

Christoph Bock, Max Planck Institute for Informatics / CC BY-SA 3.0 — Wikimedia Commons
第1部:遺伝子検査でわかる五つのこと
1. 祖先の構成
唾液から採取したDNAを解析し、世界の地域集団と照合することで、祖先がどの地域に由来するかを割合で示します。日本人の多くは東アジア系が大半を占めますが、数パーセントの範囲で意外な地域が含まれることもあり、家族の歴史を知るきっかけになります。医学的な意味は限定的ですが、民族ごとに頻度が異なる遺伝的特徴を解釈する際の前提情報になります。
2. 身体的な特性
カフェインの代謝速度、アルコールの分解能力、乳糖不耐症の傾向、筋肉のタイプ(持久力型か瞬発力型か)、睡眠の傾向、肌の光老化のしやすさなど、日常の体感と結びつく項目です。「コーヒーを飲むと眠れない」「お酒に弱い」といった体質が、遺伝子型として説明されます。
3. 疾患リスクに関連する因子
特定の疾患と関連が報告されている遺伝子変異の有無を調べます。心血管疾患、2型糖尿病、特定のがん、アルツハイマー病などの多因子疾患について、集団平均と比べてリスクが高い傾向か低い傾向かが示されます。ここで重要なのは、これは診断ではなく確率の傾向だということです。リスクが高いと示されても発症するとは限らず、低くても安心とは言えません。生活習慣の優先順位を決めるための情報として使います。
4. 栄養素の代謝傾向
葉酸、ビタミンD、ビタミンB12、鉄、オメガ3脂肪酸などの代謝や吸収に関わる遺伝子型を調べます。例えば葉酸の代謝に関わる変異を持つ人は、通常の食事では葉酸が不足しやすく、活性型のサプリメントが推奨されることがあります。血液検査の実測値と重ねると、「遺伝的に不足しやすい体質で、実際に今も不足している」といった具体的な結論が得られます。
5. 薬剤への反応傾向
一部の薬剤について、代謝の速さや副作用の出やすさに関連する遺伝子型を調べます。主治医に薬を処方してもらう際の参考情報になります。
第2部:血液検査の全項目を読む
私たちのパーソナル検査では、一般的な健康診断よりも広い範囲の血液項目を測定します。主な領域は次のとおりです。
- 血球系:赤血球、ヘモグロビン、白血球とその分画、血小板。貧血、感染、炎症の有無を見ます
- 肝機能:AST、ALT、γ-GTP、ALP、ビリルビン。アルコールや脂肪肝、薬剤の影響を反映します
- 腎機能:クレアチニン、eGFR、尿素窒素、尿酸
- 脂質:総コレステロール、LDL、HDL、中性脂肪に加え、必要に応じて小粒子LDLやリポ蛋白(a)
- 糖代謝:空腹時血糖、HbA1c、インスリン。糖尿病の手前の段階を捉えます
- 炎症と免疫:高感度CRP、フェリチン、免疫グロブリン、アレルギー関連の指標
- ホルモン:甲状腺ホルモン、コルチゾール、性ホルモン、DHEA-S
- 栄養素:ビタミンD、ビタミンB12、葉酸、鉄、亜鉛、マグネシウム、オメガ3指数
これらを「基準値内かどうか」だけでなく、「最適な範囲にあるか」「遺伝的な傾向と整合しているか」という視点で読み解くのが、レポートの役割です。

Frankincense Diala / CC0 — Wikimedia Commons
第3部:二つを重ねると見えてくること
ある40代の男性の例を挙げます。健康診断ではすべて基準値内でしたが、慢性的な疲労感が続いていました。血液検査ではビタミンDとフェリチンが基準値の下限ぎりぎりで、遺伝子検査ではビタミンDの代謝に関わる変異と、カフェインの代謝が遅いタイプが示されました。つまり、日照不足とコーヒーの飲み方、鉄分の少ない食事が重なって疲労感を生んでいた可能性が見えてきます。対策は、ビタミンDの補充、午後のコーヒーを控えること、鉄を含む食材を意識すること。検査結果は、生活の中の具体的な行動に変換されてはじめて価値を持ちます。
別の例では、脂質の数値がやや高く、遺伝子検査でも脂質代謝のリスク因子が示されました。この場合は食事の改善だけでは限界があるため、主治医と相談しながら経過を追う計画を立てました。遺伝的な背景を知ることで、「努力が足りない」という誤った自責から離れ、適切な医療につながることもあります。
第4部:レポートはこう作る
1. 検査当日
バルセロナの提携クリニックで採血、採尿、唾液の採取を行います。所要時間は30分程度で、通訳が同行します。
2. 結果が出るまで
血液・尿検査は数日、遺伝子検査は即日〜1週間で結果が出ます。即日対応の遺伝子検査は、滞在中にレポートを受け取れるよう設計されています。
3. レポートの構成
血液検査の全項目の解説、遺伝子検査の各領域の結果、二つを重ねた総合所見、優先順位をつけた生活習慣と食事の提案、施術や栄養カウンセリングの推奨事項を、日本語と英語で記載したPDFにまとめます。
4. 説明の時間
レポートを渡すだけでなく、担当者がオンラインまたは対面で内容を説明し、質問に答えます。主治医に見せるための要約も付けられます。
第5部:検査を受ける前に知っておきたいこと
- 遺伝子検査の結果は生涯変わりませんが、解釈は研究の進展とともに更新されます。レポートは「現時点の知見」であることをご理解ください
- 疾患リスクの項目は、不安を増やすためではなく、優先順位を決めるためのものです。結果の受け止め方に迷ったときは、必ず相談してください
- 遺伝情報は極めて機微な個人情報です。提携クリニックと当社は、EUの一般データ保護規則(GDPR)に基づいて取り扱い、本人の同意なく第三者に提供することはありません
- 検査は診断ではありません。治療が必要と考えられる所見があれば、医師への受診をご案内します
まとめ
遺伝子検査は「変わらない設計図」、血液検査は「変わり続ける現在地」。片方だけでは読み解けないことが、両方をそろえると見えてきます。祖先のルーツや体質のような身近な発見から、疾患リスクの傾向や不足しがちな栄養素のような実用的な情報まで、一枚のレポートが生活の優先順位を教えてくれます。検査結果を行動に変えるところまで伴走するのが、私たちのパーソナル検査です。
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